秋の天皇賞。トーセン伝説の終止符と、止めた「ワケあり」外人ニコラ・ピンナ騎手

【天皇賞・秋】トーセンジョーダンがGI初V(サんスポ)
今年の秋の天皇賞、1番人気のブエナビスタを筆頭に6番人気ペルーサまでが単勝10倍を切るオッズ、その後がトーセンジョーダンの7番人気33.3倍という、10倍台、20倍台の単勝オッズが不在という「強」と「弱」に偏った下馬評。
人気サイド6頭のうち3頭が、ルメール、ベリー、メンディザバルと外人騎手に乗り替わり。去年、スミヨンに乗り替わったブエナビスタが圧倒的な強さで後続をぶっちぎったこともあり、乗り替わりもまた人気の過熱ぶりに拍車をかけたのだろう。
今年もう1頭、日本人騎手からこの天皇賞で外人騎手に乗り替わりとなった馬がいた。それが、トーセンジョーダン。前走の札幌記念福永祐一で1着の後、秋の天皇賞ではイタリアのニコラ・ピンナに乗り替わり。しかし、外人ならもっと人気しててもいいのでは?と思う人もそこそこいるかもしれないが、実はこのニコラ・ピンナ騎手は春にも一度来日し、その時の成績が111戦11勝と期待されていたほどではなかったため、すっかりダメ外人というレッテルが貼られてしまっていて、ついにはGoogle先生にも「ピンナ 下手」というサジェストをされてしまう始末。

こんなこともあってか、外人乗り替わりというブランドを持ってしても全然人気になることはなかったトーセンジョーダン。そして、騎手だけではなく馬主も「あの」トーセンだったのも不人気に拍車をかけていたのではないか。トーセンジョーダンの馬主の島川隆哉氏は、セリで毎年大金をはたき、目玉の飛び出るほどの金額をつぎ込み続けてもまだG1に勝てていなかった。
参考:トーセンの冠名で知られる島川隆哉氏が落札してきたセレクトセール上場馬たち。
そんな、ダメダメコンビだったはずのニコピン&トーセンが伝統の八大競走である秋の天皇賞を、それも一度はダークシャドウに差し切られるんじゃないかという状態からもう一度ゴール前でグイッと出て封じ込め、まさに激走の末もぎ取ってしまった。これは由々しき事態ですぞ
ちなみに、逃げたシルポート前半1000メートルは56.5の超ハイペース。こういう前が馬鹿みたいに飛ばす芝のレース、実は今年のアイルランドトロフィーでリーチザクラウンが逃げまくった時も、ニコピンはトーセンレーヴで後ろからきっちり差し切り勝ちを決めている。南部杯当日の最終レース・オーロカップでも、ドリームノクターンが後続を引き離して逃げて粘り込むところを、後方から進めたピンナファンタストピエナファンタストで最後きっちり捉えて差しきり勝ちを収めている。逃げ馬が飛ばす府中の芝の中距離戦で追い込ませると強い、という属性があるのか?という役に立たない話が出来上がったかと思ったが、それってつまり何も考えずに後方からズドンと追い上げるだけの時は腕っ節で持って来られてるだけなんじゃないか……? まあ、そういう腹をくくった極端な競馬できるのも外人騎手の強みではあるからね。
ニコピンといえば、やはり彼が日本初勝利を挙げた時のことを思い出す。京都競馬場の表彰式でターフィー人形を手渡され、インタビューを受けている間ずっといじり回していて、スタジオのグリーンチャンネルのキャスターに「イタリアでは勝った時にああいう人形をもらうことがないだろうし、珍しかったんじゃないでしょうか」とフォローされていた。そういうまだまだ擦れてないって一面もあり、ちょっと親近感を持っていた騎手ではあったかな。馬券はエイシンフラッシュ頭固定でルメール様と心中だったけど。
ニコラ・ピンナ騎手は実はこれで海外を含めG1初勝利で、歳もまだ23歳と若い。この勝利を自信と誇りとし、今度は地元のG1レースを勝ってくれることを願っている。