6月10日 東京競馬第8競走の審議について

今話題のアレ。ファイナルフォームが決勝線手前で大きく斜行し、ランパスインベガスの進路をブロックして3着に押し下げてしまった、アレ。
これが15分の長い審議の末にそのまま確定、走行妨害の申し立てをした小島茂之調教師がそれを棄却され、小島茂之調教師がそれに対して不服を申し立てたが棄却されたというお話。
JRAからのリリースでこの件が発表されている。
小島 茂之調教師からの不服申立てに対する裁定について

申立人からは、ランパスインベガス号は2着が3着に着順が変わってしまうほど大きな被害を受けており、ファイナルフォーム号が決勝線手前で急に同馬の進路に入ってきたことは明らかに走行妨害であるとの主張があったが、(1)「加害・被害に直接の関係を有しない馬との着順の変更の可能性をもって被害の程度は判断されない。」(2)「被害馬ランパスインベガス号は決勝線に到達するまでの約2完歩の控えであり、その被害の大きさから競走能力の発揮に重大な影響があったとまでは認められない。」とされ、走行妨害の申立てを棄却した裁決は相当と認められた。

ちゃんと読めばそれなりの納得には至る。進路影響に直接関わりのない馬の存在はセーフ・アウトの判断材料にならないということと、あくまで競走能力を発揮できたかというのが基準で、入線順位の後先は判断材料にならないということが最終的な確定着順に関する裁決のルールである、とのことらしい。今までそういうルールで運用していたんだから、ここで曲げるわけがないというのも理解できる。
そういうジャッジ方針ならしょうがないと思う反面、当然「博打の胴元としてそれはどうなの」という違和感を拭うことはできない。「出走馬が全能力を発揮できたら公正である」という前提はそれはそれで良い基準なんだろうけれど、特に決勝線手前ではこういうハナ差クビ差争いの「競走能力の発揮」が、着順を簡単に前後させてしまう要素であるわけだし、馬券を買うファンは2着、3着、4着でもその間には大きな溝が横たわっている。その大切さを知っている現場やファンと、「被害馬に競走能力に重大な影響を及ぼす不利がなければ問題ない」と考える裁決との意識の違いは感じさせられた。
どちらが正しいとは、ここでは私は敢えて言わない。ただ、1着を争う競馬、1着になれなくても2着と3着では大きく意味の違う競馬で、この基準で裁決されるのであれば「そんなつまらない競馬なんて見てられない」と言わざるをえない。決勝線手前の白熱した着順争いこそが競馬で一番手に汗握って見守り、エキサイトし声を上げるシーンであり、それが「着順は関係ない」「ゴール前だから大したことない」と裁決をする側から示されてしまっては、「白ける」という言葉以外に表現方法があるだろうか。
極端な話、この基準なら脚色が優っている馬が決勝線手前で競りかけて来たらぶつけて怯ませれば勝てるということ、多少ブロックしても「残り2完歩で競走能力の発揮に重大な影響が出ない程度」であれば、進路妨害したモノ勝ち、という基準を示してしまったことにはならないのだろうか。
小島茂之調教師はJRAへの不服申立てで願いが叶わないのであれば、外部の機関へ申し立てることも示唆している。去年幸英明騎手も申し出を示唆していた日本スポーツ仲裁機構が有力ではないかと考えられる。
スポーツ仲裁機構では「競馬が公正であったか」という観点ではなくスポーツの勝ち負けという観点で見られることが予想されるが、果たしてどういう結果となるのだろうか。イメージとしては、野球で守備妨害があった場合に進塁した走者は元いた塁に戻される、サッカーでファールした後にネット揺らしても得点にならないとかそんな感じで「2着馬が3着になる妨害を受けたので、その時点で1着も無効」とらえてもらえないかなと。
ただし、外部機関での審理の結果が中央競馬会に対しての強制力を持つわけではないので、そこはまた不安であるところではあるんだけれど。
最後に結論というか、個人的な期待や希望としては、やはり上位入線馬に関わる進路影響は、特に決勝線手前などで着順が変わるようなケースでは厳しく走行妨害の判定を下すように裁決の基準を変えてほしいということ。今まではわかった、そうやって運用されていたのはハッキリとしてなかったし知らなかった。ただ、その基準を知ってしまった以上、知らなかった今までとは同じように楽しめるとは思えないので、今回の「現場とのズレの認識」を機に変えるように動いてほしいということ。
生涯を賭けて愛する、大好きな中央競馬だからこそお願いしたいことです。