ハクレイファームのオーナーでレッドマジック代表の片山晃さん、売ってはいけない株を売り抜けてブログで謝罪
大株主による上場後の売却制限 個人投資家が違反: 日本経済新聞
バイオベンチャーのモダリスは、大株主による株の売却を上場日から半年間制限する「ロックアップ」に違反があったと発表した。有名個人投資家の片山晃氏が同社株60万株(約18億円)を期間内に売却していた。違反への罰則はないが、ロックアップについての情報は上場前に開示が求められており株取引の需給にも影響する。株主が不正に利益を得ることを防ぐ目的もあり、新規上場をめぐり市場に波紋が広がりそうだ。
片山晃さんといえば、競馬好きの間ではレッドマジックという名前の馬主で有名ですね。レッドマジックは所有馬の馬名由来の多くがアニメやゲーム、ボカロの曲名やキャラクター名で、オープン入りしたイモータルスモーク(東方)や、ディープインパクト産駒のスノーハレーション(ラブライブ!)、エターナルブレイズ(水樹奈々)などを所有してきています。オーナーであるハクレイファームは「東方Project」のキャラクター博麗霊夢(はくれいれいむ)が由来であり、「レッドマジック」の勝負服もそのキャラクターの衣装がモチーフになっていると思われます。
で、その片山晃さんが「売ってはいけない株」を売って約18億円の現金を得てしまったことで、市場がざわついています。
それについて謝罪のブログ記事を掲載
はてなブログに投稿しました #はてなブログ
— 五月 (@hakureifarm) 2021年3月24日
モダリス株の制度ロックアップ違反に関するお詫び - 株と競馬と企業経営 https://t.co/wIKSi7Y6LZ
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— 五月 (@hakureifarm) 2021年3月24日
モダリス株の制度ロックアップ違反に関する補足と今後の対応について - 株と競馬と企業経営 https://t.co/Qw9CTPEfUD
彼が当該株、モダリス上場時に何と言っていたか?
ゲノム編集のモダリスがIPO。縁あってエンジェルラウンドから参加させていただき、昨年のプレIPOでも追加投資。創業から4年のスピード上場でした。日本のバイオベンチャーでこれほど最先端の技術を引っ提げてきた会社はそう記憶にありません。株価はともかく、上場後の画期的な成果を期待します。
— 五月 (@hakureifarm) 2020年6月26日
「株価はともかく、上場後の画期的な成果を期待します。」
↓
3ヶ月後
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120210324483240.pdf
当社が 2020 年 12 月期の決算作業として株主名簿の確認を行ったところ、当社株主であった片山晃氏(以下、片山氏といいます。)が、上記の確約に違反して、当社に事前通知をしないままに譲渡制限期間に下記の通り所有株式の全部を市場で売却していたことが判明致しました。
ロックアップ期間中に、ということが明示的な罰則やシステム的な制限がないとはいえ大問題というのもそうなのですが、ロックアップの有無以前にベタ褒めしたIPO直後の所有株式を全部売り払いたくなる理由とは……なんなんでしょうねぇ。
ロックアップとは?
▼ロックアップ 新規上場企業の大株主に対し、上場から一定期間に保有株式の売却を制限すること。株主が短期間で利益を得る行為を防いだり、大口の売りを防いで上場後の堅調な株価形成につなげるのが狙いだ。ロックアップには2種類あり、東京証券取引所の規則で求められているのは、企業が大株主に原則上場から6カ月間の売買の制限を求める。これとは別に、任意で証券会社が大株主に一定期間株式を売却しないよう求める形式もある。
前出の日経の記事より。株式市場に新規に上場するこの株にはこれだけの大株主がついていて、この人達は市場で売却しない約束をしていますよ、だから安心して株を買ってくださいねという公開情報ということになる。これは当該企業と投資家だけの問題ではなく、市場に参加する投資家を欺き、市場の信頼を失墜させかねない……ということで、日経でも記事になってるわけですね。
上記は売却を行ったとされる期間の当初、2020年9月1日の前日である8月31日終値からのグラフ。(終端は9月15日終値) 株価は3460円(8月31日)から2772円(9月16日)まで約20%下がっている。
参照:(株)モダリス【4883】:詳細情報 - Yahoo!ファイナンス
これはいけませんねぇ……。ちなみに「全部買い戻して利益を寄付などで返上する」については、ルール違反がバレたら元に戻して利益を手放せばそれで手締め、というわけにはいかないでしょう。ロックアップ期間、それも上場後1ヶ月強というタイミングでの全株式売却という行為について、株式市場全体として彼にどう責任を取らせるのかは注視していきたいですね。また、メディアなどで投資について散々しゃべってきた片山氏が、本件のみならずこれまでどういう取引で財と名声を成してきたのか、という話にはなるかと思います。
競馬との関わりについて
最近のお金関係のやらかしで馬主業から退場していった人といえば、脱税で有罪判決を受けた三崎優太氏を思い出します。
「青汁王子」に有罪判決 1・8億円脱税 東京地裁:朝日新聞デジタル
本件ロックアップ違反については法令に違反するものではなく、また少なくとも手元の金融資産の総額などは利益の返上や何らかのペナルティを受けたところで牧場やオーナー業の継続ができないレベルではないかと考えられます。もちろん、個人としての信用が大きく失墜してしまったことにより、これまでのような資産の増やし方ができないなどで事業の縮小の可能性はなくはないでしょう。馬主なんてメンツの商売ですし、カリスマ個人投資家と持て囃されていたけど実は……というのは体面が悪いでしょう。
そもそも、本業で「私の不注意と不勉強に起因するもので」市場ルールに反する大失態をやらかして大儲けしちゃった人ですからね。同業、または株式市場に多額の金融資産を有している人の印象はかなり悪くなっていそうです。個人的には、ルール違反もそうですがツイッターでベタ褒めして「株価はともかく、上場後の画期的な成果を期待します。」とまで言っていた株を、その3ヶ月後には全部市場で高値で売り抜けているという言行不一致がかなりの悪印象です。個人的にも元々片山氏の競馬関連の言動にはかなり不信をもっていましたが、彼の当該企業への評価は高値で売り抜くための甘言だったということになり、じゃあ競馬でも?と多くの人に思われていくことは避けられないかと。
ハクレイファームの生産馬にロックアップと名付けたら……ダメですからね!