英愛競馬書斎観戦記2022/05/07 Ascot, Lingfield, Naas, Heydock

Buckhounds Stakes 6頭立(Ascot, 4yo+, Listed, 1m3f211y)

注目はなんといっても5歳セン馬Al Aasy、重賞3勝で去年のCoronation Cup (G1)ではPyledriverの2着の実績がある馬の今季初戦がこことなった。オッズは5-4程度。4歳牡馬のThird Realmも重賞で善戦してきた実力馬だが、さすがに相手が悪そう。Al Aasy、Third RealmともにSea the Starsの産駒。
レースは4番手のインにつけたAl Aasyが直線入り口で少し進路を迷うところがあったが、ファーサイドのラチ沿いに狙いを定めると前の3頭を一気に差し切って優勝。シャドウェルの勝負服がBaaeedの今季初戦(ロッキンジS)の前に躍動してますね。
Third Realmは昨季のG3で2着のあるMandoob(父Farhh、4歳セン馬)に屈して3着。

Derby Trial Stakes 4頭立(Lingfield, 3yo C&G, Listed, 1m3f133y)

注目はCharlie Appleby厩舎William Buick騎乗のGodolphin 1stの勝負服Walk of Stars(父Dubawi)。今季初戦のNewburyの条件戦で同厩舎のHafitに勝利。このレースの内容が評価されてダービーの重要なトライアルであるここに駒を進めてきた。直前オッズは11-10。
週中のChester開催で絶好調だったAidan&Ryan Mooreのバリードイル軍からはUnited Nations(父Galileo)がここでも青服軍団に待ったをかけるか。直前オッズは5-2。
レースはGodolphin陣営のNatural Worldが引っ張る展開を2番手でUnited Nationsが追いかけ、Walk Of Starsはその後ろ。最終コーナーまでにNatural Worldが引き離しペースメーカーとしての役割はここまで。残り100mまでUnited NationsとWalk of Starsの激しい叩き合いとなったが、Ryanの鼓舞に応えたUnited Nationsが最後はWalk Of Starsに1馬身差をつけてゴール板を駆け抜けた。
これでA P O'Brien厩舎のクールモア軍は何頭目……のダービー有力馬となったのか……? 対するGodolphin陣営はトライアルというトライアルではまだNahanniの1勝のみ。トライアルと本番は確かに違うというのが去年の同じ青服Adayerの勝利なんだけれど、今季スタート~2000ギニーまでの「今年もCharlie Applebyがヤバい!」という空気からすると、なかなかのクールダウンを感じる。



Oaks Trial Fillies' Stakes 8頭立(Lingfield, 3yo f, Listed, 1m3f133y)

LingfieldのオークストライアルはJack Mitchell騎乗のRogue Millennium(父Dubawi)が勝利、Wetherby競馬場でのデビュー戦からこれで2戦2勝となった。
Rogue Millenniumは日本でもおなじみDoff The Derby牝系で、Merayaatを競走時に所有していた故ハムダン殿下からシャドウェルで育まれてきた血統だったが、ハムダン殿下の死去後にシャドウェル自体が縮小路線となったことからか、昨年末のセールで35,000gnsで売却されていた。

  • Doff The Derby (by Master Derby)
    • Wedding Bouquet(by Kings Lake)



Blue Wind Stakes 6頭立(Naas, 3yo fillies, G3, 1m2f)

人気となっていたのはクールモア軍マグナー夫人勝負服のAidan O'Brien厩舎Lily Pond(父Galileo)。4/12のDandalk競馬場のAWのMaidenを勝ってここに駒を進めてきていた。Ryan MooreがLingfield競馬場に行っているので、ここでは前走から引き続きColin Keaneが鞍上を務めていた。
日本からの注目は島川隆哉さんがオーナーのTosen Lydia(父The Gurkha)。Joseph O'Brien厩舎からデビューしてここまで2戦2勝。前走もTuesdayと同日のレースで同距離を遜色ないタイムで勝っている。父のThe Gurkhaはクールモアスタッドを出されたばかりだが、Galileo直系種牡馬オークス戦線に名乗り出て評価を見返したいところ。
レースはTosen Lydiaと同じJoseph厩舎のDylan McMonagle騎手騎乗のTranquil Lady(父Australia)が直線で前を行くLily Pondをかわした後も力強く突き放して勝利。先手を主張していったLily Pondが2着、前2頭に食らいつくも最後は力尽きて離されていったがTosen Lydiaが3着を確保。
Tranquil Ladyは先日ガネー賞を勝ったG1x3勝馬State Of Rest(4歳牡馬、父Starspangledbanner)の半妹にあたる。State Of Restも同じくJoseph O'Brien厩舎。



Spring Trophy Stakes(Haydock, 3yo+, Listed 7f37y)

シャドウェル勝負服、Jim Crowley騎手、William Haggas厩舎のBaaeedトリオ、昨季を2連勝で締めくくったAldaary(4歳セン馬、父Territories)が3連勝目をListedで鮮やかに決めた。馬群の後方からゴーサインに応えて突き抜けきるパフォーマンスは、もっとレベルの高い条件でも勝負になりそう。



Chartwell Fillies' Stakes(Lingfield, 3yo+ f, G3, 7f)

人気薄(11-1)Lola Showgirl(父Night Of Thunder)がニアサイドをスタートから快調に飛ばしてそのまま1番にゴール板を駆け抜けた。Tom Marquand騎手は前々日のOrmonde StakesのHamishに続く重賞勝利となった。

イギリス競馬書斎観戦記2022/05/05 Chester競馬場

重要レースはダービーへのステップとなるDee Stakes(Listed, 3yo, 1m2f70y)と、古馬長距離のOrmonde Stakes(Gr.3, 1m5f84y)。この日のChester競馬場は晴れて、前日にSoftだった馬場もGood to Softまで乾いてきていた。

Dee Stakes(Listed) 3yo, 1m2f70y

人気はAidan厩舎Ryan Moore騎乗のGalileo産駒Star Of Indiaで、11-8の人気。Native Trailの勝ったCraven Stakesで5着だったが、Galileo牡馬で距離延長は当然プラスなはずでここからダービーという狙いがよくわかる。
レースは道中インの3番手につけていたStar Of Indiaがコーナーでバラけたところを外に出して抜け出し、そのまま後方から差してきた2着のCrestaに2馬身1/4の差をつけて快勝。ダービーにまた1頭Aidan O'Brien厩舎から名乗りを挙げる形となった。マイルでは2000ギニーでワンツーを決めたCharlie Appleby陣営がダービー戦線で苦戦している中、Aidan O'Brien陣営は着実に勝負になりそうな馬が増えてきている。



Ormonde Stakes(Gr.3)1m 5f 84y

人気は昨季のBritish Champions Fillies & Mares Stakesの2着馬Albaflora(父Muhaarar)で6-5。Yorkshire OaksでもSnowfallの2着がある。日本からの注目はマエコーさんの持ち馬Believe In Love(父Make Believe)とSnow Fairyの産駒John Leeper(父Frankel)。John Leeperはダービーでも期待されたけれど9着で、その後もイマイチ。今季初戦、母にも騎乗していたRyan Mooreが乗るここで浮上のきっかけを掴みたい。
レースは番手の外から抜け出したWilliam Haggas厩舎Tom Marquand騎乗のHamish(父Motivator、6歳セン馬)が先に抜け出したThunderousを捕らえきって勝利。人気のAlbaflolaは直線入り口で既に手応えが怪しく、5着でゴール。John Leeperは勝負どころから手応えが良く、コース取りに苦労したものの最後よく追い上げてきて4着。長距離戦線での覚醒があってもおかしくない。マエコーさんがオーナーのBelieve In Loveは見せ場なく6着だった。

イギリス競馬書斎観戦記2022/05/04 Chester競馬場

重要レースはCheshire Oaks(Listed)Chester Vase Stakes(Gr.3)、それぞれオークスとダービーのプレップ。

Cheshire Oaks(Listed) 3yo filly, 1m 3f 75y

人気はジョセフ・オブライエン厩舎のAbove the Curveで、マグナー夫人勝負服のAmerican Pharoah産駒。前走のLeopardstownでのMaidenを強い内容で勝ち、オークスのオッズがついていた。
レースはRyan Moore騎乗の、モイグレア勝負服でAidan厩舎のThoughts of Juneが逃げる形から、馬群から抜け出してきたAbove the Curveが最後まで前を追う。決勝戦ではクビ差だけThoughts of Juneが出てゴール。雨馬場で馬場状態はSoft、LeopardstownのMaidenではAbove the Curveの2着だったThoughts of Juneだが、Galileo産駒の重い馬場への適性で逆転となったか。ただ、どちらもハッキリとオークスでというイメージはわかず、依然混戦のままのオークス戦線は果たしてどうなるのか。



Chester Vase Stakes(Gr.3) 3yo, 1m 4f 63y

人気はダービーでも上位に推されていたCharlie Appleby厩舎でWilliam Buickが乗るNew London(父Dubawi)。前走NewmarketでのNovice Stakesでいずれもゴドルフィンの有力馬を負かしてここに臨んできて、Appleby厩舎のダービー候補たちのプレップ2本目の矢だった(1本目はNahanni)。この馬、とにかく馬体が派手。デカくて筋肉盛りで、本当にこの距離&緩い馬場とChesterのカーブをこなせるのかと思ったら案の定……! 4-11の圧倒的人気となっていたNew Londonの足元をすくったのは、Cheshire Oaksと同じAidan&MooreのGalileo産駒Changingoftheguard。18文字の区切りなし馬名だけれど、Changing of the Guardのことらしい。Thoughts of Juneと同様に先手を主張したRyanに導かれ、コーナーで出口まで回りに苦しんでいたNew Londonを結果的には6馬身半も離してのゴールとなった。New Londonは距離もコース形態も向いていないように思えたので、仏ダービーあたりで再度そのポテンシャルを見てみたい。
なお、Chester Vase勝ち馬となったChangingoftheguardの流星は、とても面白い形をしている。



Deepbridge Handicap(Class3) 3yo, 6f 17y

3歳の短距離ハンデ戦でトップハンデ(9st11lbs)を背負って4馬身3/4差で人気に応えて勝ったのがKodi Bear産駒のEver Given。今季初戦を勝利で飾り、これで5戦して2勝となった。2歳時にYorkのListedで4着の実積があり、力をつけているのであれば高いレベルでもやれるのではないか。
なおこのEver Given、馬主がDandy Boysというサッカーのマイケル・オーウェンが競馬仲間と結成しているグループで、ITV RacingでもChester競馬場のパドックにいるところをMatt Chapmanに捕まって直撃されていた。
Dandy BoysについてのRacing Postの記事