せっかく濃い議論ができたので、有馬記念の予想プロセスを書き出してみる

有馬記念の前日に徹夜で列んでいる時、いつもの中山競馬場南門に新聞の不必要な部分を敷いて、友人Ｔと馬柱を見ながら有馬記念の検討を始める。
「アンライバルドの若駒ステークスを見て、ディープインパクト級の衝撃を感じた」
「いやいや、皐月賞の抜け出す脚のほうがパフォーマンスとしては上だろう」
「ダービーはあの馬場だし、一応参考外ということで」
「春と秋のアンライバルドは、走法が違うのが気になる。首の高さが全然違ってるのが気になる」
「中山に変わって、皐月賞のような一気に抜け出せる脚が内から炸裂すれば、頭で来ても全然おかしくないんじゃない？」
「そもそも、神戸新聞杯も菊花賞も引っかかりすぎで、あんな競馬じゃ勝てないよ」
「アンライバルドは全然あると思うし、人気なさすぎだとも思うけれど、ちょっとイチかバチかすぎるんじゃないかな」
「今年の有馬記念は、手広く買って儲けを減らしてでも獲りにいくか、キッチり絞って大きく狙うか、どっちかハッキリしておかないと、あの馬も切れない、この馬も切れないで中途半端な馬券買うことになっちゃうよ」
「中山だし、デムーロに賭けてみるのもアリかもしれない」
「ブエナビスタはどうだろう。３歳牝馬とはいえ、今年は充実の４歳馬が１頭も出ていない異常な歳だ。データはあまり気にしないでいいかもしれない」
「ヒシアマゾン、ファビラスラフイン、ファインモーション、テイエムオーシャン、どれもＧ１実績を引っさげて有馬記念に挑戦してるし、そのあたりと比べてもブエナビスタは遜色ない実績を持っている。あっさり勝ってしまってもおかしくはないな」
「桜花賞もオークスも僅差の勝利、秋華賞も馬混みを抜けてからもっと弾けるような脚を使っていないと」
「オークスの競馬は直線に入ってから内か外か迷ったり、秋華賞も抜け出すまでに脚を使わされていたし、エリザベス女王杯も実質マクる競馬で４角先頭、そこからさらに後続を３馬身ちぎるんだからパフォーマンスとしては優秀すぎるほどだよ」
「規格外の馬ではあるか。札幌記念も最後までしっかり脚を伸ばしてるしな」
「松田博資調教師も『ノリくんがどんな競馬をしてくれるか楽しみ』とか言ってたし、先行策あるんじゃないか？」
「馬群が苦手だからアンカツは極端な競馬してたんだと思ったけど。秋華賞で馬群の中で競馬できたのもあるし、中団から一気の脚で抜け出しもあるかもな」
「コスモバルクは、さすがに今年でもキツいだろうね」
「どのレースも良いところなく負けすぎ。なんで引退してないんだろう、ビッグレッドファームで種牡馬にすればいいのに」
「ザグレブの仔じゃあなあ……」
「マイネルキッツは、秋の成績がちょっと。宝塚記念は狭いところに入って脚を余している感じだったし、割引材料にはしなくていいと思う」
「春の天皇賞もコース取りの差が出てたし、２着アルナスラインなあたりから考えても天皇賞は参考外でいいと思う」
「去年の有馬記念の俺の本命馬、アルナスラインなんだけれどなぁ……」
「ミヤビランベリって、どうも勝つ姿のイメージができない」
「重賞３勝は今年の出走馬の最多タイ。目黒記念もアルゼンチン共和国杯も強かったぜ」
「一線級と当たってない、トウカイオーザ級だろ」
「展開的には、前が引っ張る流れを番手を進んで抜け出しを図れる、理想的な競馬ができると思うんだけどな」
「エアシェイディは、無視されがちだけど王道路線で結構差のない競馬をしている」
「新潟記念も一番外から物凄い脚で突っ込んできて、着順としては４着だけれど能力は見せた競馬だった。最後に後藤がケツ上げたし」
「秋の天皇賞もＪＣも、大きく負けてはいない。何より両方使ってる馬って今回エアシェイディだけだし、大レースに使い続けられるのは好調な証拠だろ」
「怖いな、今年も３着なら全然ある。ナイスネイチャとかダイワメジャーとか、３着を連発するのはよくあることだし、ダイワテキサスとかでも３着に来てるわけで」
「コイントスも３着に粘ったし、人気薄の関東馬はなぜか３着に来るみたいだな」
「普通に買える。っていうか頭もあるんじゃねえの？」
「頭はさすがにねえよｗ　でも、３連複では確実に押さえておく」
「マツリダゴッホ、中山でこの馬を買わないわけにはいかない。去年は沈んだけど」
「去年は競馬が悪すぎた。あんな競馬じゃマツリダゴッホの良いところが全然生かせない。今年は勝った時みたいに先行して抜け出す競馬で巻き返しなるか、ってところ」
「オールカマーではドリームジャーニーも完封してるし、去年のＪＣは強い競馬だった」
「中山巧者すぎる、日経賞とか見るとどう考えても強い」
「最高のパフォーマンスはAJCCだと思うけど」
「リーチザクラウンは、ちょっと能力的に難しいと思う」
「こういう馬って、一度は逃げてぶっちぎりの勝利ってパフォーマンスしててもらわないと、Ｇ１では買いづらい。しぶとく粘り込む競馬はしてるけど、ダービーでも最後はアントニオバローズに詰められてるし」
「菊花賞でももっと逃げ粘ってほしかった。早々と潰れすぎ」
「セイウンスカイでも有馬記念はあの競馬だったし、メンツが落ちると言ってもＧ１では通用しないタイプの逃げ馬じゃないかな」
「ドリームジャーニーは俺の本命。なんでこんなに人気してるのかわからんが」
「今年１年王道路線を歩み続けて、大きく負けてないからじゃないかな。右回り補正プラス、天皇賞も出遅れてあの競馬」
「オールカマーでマツリダゴッホに負けたのも、向こうは札幌記念から、ドリームジャーニーは休み明けの差があった」
「どうもドリームジャーニーが有馬記念馬ってイメージができないんだよ、こう過去の有馬記念馬に比べて格がないというか」
「シルクジャスティスみたいな馬もいたし、ハーツクライみたいに翌年大活躍した馬もいる。今どうこう言ってもしょうがないと思うぜ」
「宝塚記念も、阪神のあのコースでうまくトップスピードに乗る競馬ができたからこその勝利だと思うし、そう、ちょうどスイープトウショウみたいに。有馬記念で外から一気にトップスピードで全馬ゴボウ抜きは難しくないか？」
「マンハッタンカフェがそんな感じだな。あの時も、有馬記念の常識を覆したみたいな言われ方してたぜ」
「マンハッタンカフェの名前が出たところで、スリーロールス。夏の上がり馬で菊花賞を勝った馬が有馬記念に直行で勝つパターンといえば、近年ではマヤノトップガンとかマンハッタンカフェとか」
「強いとは思うが、菊花賞で最後に外にヨレたのが気に入らない。ダンスインザダークだし、デルタブルースみたいな気がする。デルタは３着だっけ？」
「デルタブルースはＪＣで３着、その後有馬記念で５着。たぶん、このあたりがダンス産駒の有馬記念での限界」
「中山がダメってわけじゃなくて、千六ではダンス産駒が激強らしいぞ」
「ステイヤーズでも、ダイタクバートラムとか強かったしな。でも、とにかく有馬記念でダンスインザダークは買えない」
「イコピコは神戸新聞杯が強くて、菊花賞でも見どころのある競馬をした。父親のマンハッタンカフェみたいな競馬をすれば、一発は十分にあるはず」
「でも一戦余計じゃね？」
「鳴尾記念に出たのはしょうがないとして、最低でも勝ってもらってないと確かにキツいな」
「中山実績がないのも怪しい。阪神とか京都とか、そういう競馬場でしか実績残してないのもちょっと買いづらい」
「テイエムプリキュアは、京都大賞典を見ると能力的にちょっとキツい。リーチザクラウンが流れを作るはずだし、マークされるだろうからエリザベス女王杯の再現は難しいはず」
「日経新春杯も軽ハンデだったしな」
「馬主孝行な馬だと思うよ、引退発表後に日経新春杯勝って現役続行して、エリザベス女王杯でも２着に入るんだから」
「シャドウゲイトは、あまり語るところがないなぁ」
「一応シンガポールでＧ１勝ってるんだっけ？」
「一応。」
「でも、今年の成績じゃ買いづらいな」
「セイウンワンダーはグラスワンダー産駒。グラ基地最後の希望」
「血が騒げば、もしかするかも？」
「堅実に脚を伸ばして、ダンス天国だった菊花賞ですら３着。頭まではどうかと思うけど、３着なら」
「この馬がどうして上位に来るのかさっぱりわからん」
「俺にもわからんが、何か最後に突っ込んでくる。そういう馬、それ以上でもそれ以下でもないと思う」
「ネヴァブションは、中山実績もあるし無視はできない」
「AJCCで差をつけて勝ってるってのは、2007年のマツリダゴッホと一緒。ただ、ＪＣの着順からしてもちょっと厳しいんじゃないかとは思う」
「伊藤正徳調教師って、諦めて金杯に出すって選択肢を持たない人だよなぁ」
「最後。フォゲッタブルはダンスインザダーク産駒ってことで消しで」
「ステイヤーズ勝ってるし、軽視するのはどうだろう」
「正直、ステイヤーズ勝つような馬が有馬記念でこれだけ人気するのはどうかと思う。どうしてみんなフォゲッタブルを買ってるのか理解できない」
「メジロブライトもステイヤーズ勝ってるぞ」
「ブライトはあれだけぶっちぎったし、明らかに規格外だろ。フォゲッタブルは普通の勝ち方だし、ダンス産駒だし、買う奴は競馬やめたほうがいいと思うよ」
「スリーロールスとフォゲッタブルで決まったらどうする？」
「その時は俺が競馬やめる。来年のドバイワールドカップまで」
「ダンスインザダークは、ダイタクバートラムが３着だっけ？」
「バートラムは４着。ダンス産駒はマジでここが限界。ディープインパクトに国内で唯一土をつけた男・ルメールは買いたいんだけれど、フォゲッタブルは消しの材料が多すぎるんだよなぁ」
こんな感じで、順番じゃないけれど全馬検討してから、だいたい毎年朝を迎える。そして、俺は一度も有馬記念で馬券が当たったことがない。
ちなみにこの「机と編集者のやりとり」みたいな会話、どっちの発言かはうやむやだし、筆者の脳内補完が入っている部分もあるんで割と適当。