2015年ダービーの出走可能賞金ボーダーが高そう、超高そう
共同通信杯終了時点の記事を更新しました
本編
2014年の競馬番組で、いちょうステークスが重賞となり、京都2歳ステークスも重賞となり、ラジオNIKKEI賞から重賞格を譲ってもらったホープフルステークスもG2で賞金倍増となり、ダービー前までに牡馬に与えられる収得賞金の額が一気に増えた。これに加え、夏前の東京・阪神開催から始動する有力馬が増えたことで新潟2歳ステークスがクラシックの登竜門として位置づけられるようになったり*1、朝日杯がトリッキーなコース設定だった中山から阪神に移設されてクラシックを狙うような馬も出走するようになったりと、皐月賞・ダービーを狙う馬が収得賞金を得る機会が増加している。ダービーまでの世代限定重賞が存在感を増し、「ダービーからダービーへ」の物語をより一層意識させられるような競馬番組となっているわけだけれど、これによって今年から優先出走権を持たない馬のダービーの出走賞金ボーダーが劇的に上がりそうな様相となっている。
実際の数字を出して2013年の2歳戦と2014年の2歳戦の賞金獲得状況を比較しようと思ったが、2013年はハープスターとレッドリヴェールが混合の重賞を勝っているため2012年の2歳戦と2014年の2歳戦を比較することにする。
2012年の2歳戦賞金獲得状況
順位 | 馬名 | 賞金 | 賞金加算オープン競走 |
1 | コディーノ | 4900 | 朝日杯2着、札幌2歳、東スポ杯 |
2 | ロゴタイプ | 4400 | 朝日杯 |
3 | エピファネイア | 2750 | 京都2歳、ラジオNIKKEI杯 |
4 | テイエムイナズマ | 2200 | デイリー杯 |
5 | ザラストロ | 1900 | 新潟2歳 |
6 | ラブリーデイ | 1850 | 京王杯2着、野路菊 |
7 | ラウンドワールド | 1750 | コスモス賞、札幌2歳2着 |
8 | クラウンレガーロ | 1700 | 小倉2歳2着、デイリー杯2着 |
9 | レッドレイヴン | 1550 | 東スポ杯2着 |
10 | サトノネプチューン | 1150 | ホープフル |
10 | インパラトール | 1150 | 萩 |
10 | フラムドグロワール | 1150 | いちょう |
(※ダービーに出てきそうなレース選びをしている馬を抜粋)
この年は比較的賞金加算する馬がかたまる傾向にあったようで、2歳戦終了時点で10位タイが1勝+オープン勝ちの1150万という平和な争いとなっている。実際、翌2013年のダービーの優先出走権を持たない馬の出走最低収得賞金もフラムドグロワールとアクションスターの1150万と、2歳オープン1勝か3歳の重賞2着1回でダービーの出走に足りた、という緩い出走条件であった。
2014年の2歳戦賞金獲得状況
順位 | 馬名 | 収得賞金 | 賞金加算オープン競走 |
1 | ダノンプラチナ | 4400 | 朝日杯 |
2 | シャイニングレイ | 3650 | ホープフル |
3 | ベルラップ | 2500 | 京都2歳 |
4 | タガノエスプレッソ | 2200 | デイリー杯 |
4 | コメート | 2200 | ホープフル2着 |
6 | クラリティスカイ | 2000 | いちょう |
7 | サトノクラウン | 2000 | 東スポ杯 |
8 | ミュゼスルタン | 1900 | 新潟2歳 |
8 | ブライトエンブレム | 1900 | 札幌2歳 |
10 | ダノンメジャー | 1850 | 野路菊、京都2歳2着 |
11 | コスモナインボール | 1700 | アイビー |
12 | アヴニールマルシェ | 1650 | 新潟2歳2着、東スポ杯2着 |
13 | エイシンライダー | 1200 | 萩 |
13 | ジャストドゥイング | 1200 | 芙蓉 |
13 | ナヴィオン | 1200 | ききょう |
13 | マイネルサクセサー | 1200 | クローバー賞 |
13 | ケツァルテナンゴ | 1200 | 中京2歳 |
18 | アッシュゴールド | 1100 | デイリー杯2着 |
19 | ネオルミエール | 1050 | いちょう2着 |
20 | マイネルシュバリエ | 1000 | 札幌2歳2着 |
(※ダービーに出てきそうなレース選びをしている馬を抜粋*2)
今季のクラシック路線は、オープン以上で2回賞金を積んでる馬がアヴニールマルシェとダノンメジャーの2頭しか出ていないため、賞金増額に加えて獲得賞金がバラけて更にハイレベルとなっている。10位のダノンメジャーですら1850万というのは相当激戦。ここから更に京成杯、きさらぎ賞、共同通信杯〜と3歳重賞が次々と行われ、その1着馬は1勝分を合わせて最低でも2250万の収得賞金に到達する。ダービーの優先出走枠は皐月賞4着以内、青葉賞2着以内、プリンシパル1着の合計7つで、フルゲート18頭から引くと賞金順での出走枠は11。もちろんトライアル次第ではあるが、現時点で11位のコスモナインボールの1700万より収得賞金額が下の馬は「除外対象」と考えておいたほうがよさそうだ。更に、1900万のミュゼスルタン・ブライトエンブレムの2歳夏までの重賞ウイナー組も出走はかなり怪しく、ブライトエンブレムはそれを察知してか次走を共同通信杯に選定して「トライアル一発勝負」を避けにきている。クラリティスカイやサトノクラウンなど秋の重賞ウイナー組も、安泰とは言えない状況なのではないか。
2歳重賞を強化した年からいきなりこんな「戦国」となってしまうと、今後の「ダービーに確実に出走するライン」探りはかなり難しくなることが予想される。少なくともこれまで「出走できるかも」ラインであった1勝+重賞で2着1回という賞金では皐月賞すら出走が難しい時代になるだろうし、ダービーは重賞1勝では出走安全圏に届かない争いが毎年のように起こると思われる。
激戦必至の重賞増加初年度で西高東低の時代に関西のクラシックにつながる重賞ならば毎回重厚なメンバーが揃うものと思っていたのだけれど、どうにも関西の重賞は今シーズンは「手薄」になる傾向があるようだ。今週末のシンザン記念は12頭で前走掲示板がたったの4頭、オープン馬も3頭、2歳重賞で跳ね返されてきたナヴィオンが1番人気になりそうなメンバー。デイリー杯は9頭立て、京都2歳に至っては8頭立ての競走となった。デイリー杯・京都2歳組の上位組はその後の朝日杯・ホープフルでもイマイチ*3。きさらぎ賞のアッシュゴールド、レガッタ、ルージュバック、ポルトドートウィユよりも共同通信杯のアヴニールマルシェ、ブライトエンブレム、リアルスティール、ティルナノーグのほうが明らかにメンバー揃ってるように見えるし。シャイニングレイも関西の重賞全部すっ飛ばしてホープフルの次に共同通信杯か弥生賞を検討していたようだし*4、朝日杯はG1だからメンバーが揃うとして、他の重賞が軒並み空き巣なのはこれは重賞増やしすぎてメンバーが分散してしまったのか……? いずれにせよ、これからは更に「重賞が空き巣なら、そこを狙って賞金積む、適性・臨戦過程よりメンバー構成」といった戦略は陣営により一層求められてくるだろうし、新しい番組にいち早くアジャストするセンスや情報収集力など、調教師に求められるモノはこれまで以上に複雑なものとなってくるのではないだろうか。
ダービーは、まずは枠に入りこまなければ絶対に勝てない。