2015年ダービーの出走可能賞金ボーダーが高そう、超高そう

共同通信杯終了時点の記事を更新しました

http://d.hatena.ne.jp/americanboss/20150216/p1

本編

2014年の競馬番組で、いちょうステークスが重賞となり、京都2歳ステークスも重賞となり、ラジオNIKKEI賞から重賞格を譲ってもらったホープフルステークスもG2で賞金倍増となり、ダービー前までに牡馬に与えられる収得賞金の額が一気に増えた。これに加え、夏前の東京・阪神開催から始動する有力馬が増えたことで新潟2歳ステークスがクラシックの登竜門として位置づけられるようになったり*1、朝日杯がトリッキーなコース設定だった中山から阪神に移設されてクラシックを狙うような馬も出走するようになったりと、皐月賞・ダービーを狙う馬が収得賞金を得る機会が増加している。ダービーまでの世代限定重賞が存在感を増し、「ダービーからダービーへ」の物語をより一層意識させられるような競馬番組となっているわけだけれど、これによって今年から優先出走権を持たない馬のダービーの出走賞金ボーダーが劇的に上がりそうな様相となっている。
実際の数字を出して2013年の2歳戦と2014年の2歳戦の賞金獲得状況を比較しようと思ったが、2013年はハープスターレッドリヴェールが混合の重賞を勝っているため2012年の2歳戦と2014年の2歳戦を比較することにする。

2012年の2歳戦賞金獲得状況

順位 馬名 賞金 賞金加算オープン競走
1 コディーノ 4900 朝日杯2着、札幌2歳、東スポ
2 ロゴタイプ 4400 朝日杯
3 エピファネイア 2750 京都2歳、ラジオNIKKEI
4 テイエムイナズマ 2200 デイリー杯
5 ザラストロ 1900 新潟2歳
6 ラブリーデイ 1850 京王杯2着、野路菊
7 ラウンドワールド 1750 コスモス賞、札幌2歳2着
8 クラウンレガーロ 1700 小倉2歳2着、デイリー杯2着
9 レッドレイヴン 1550 東スポ杯2着
10 サトノネプチューン 1150 ホープフル
10 インパラトール 1150
10 フラムドグロワール 1150 いちょう

(※ダービーに出てきそうなレース選びをしている馬を抜粋)

この年は比較的賞金加算する馬がかたまる傾向にあったようで、2歳戦終了時点で10位タイが1勝+オープン勝ちの1150万という平和な争いとなっている。実際、翌2013年のダービーの優先出走権を持たない馬の出走最低収得賞金もフラムドグロワールとアクションスターの1150万と、2歳オープン1勝か3歳の重賞2着1回でダービーの出走に足りた、という緩い出走条件であった。

2014年の2歳戦賞金獲得状況

順位 馬名 収得賞金 賞金加算オープン競走
1 ダノンプラチナ 4400 朝日杯
2 シャイニングレイ 3650 ホープフル
3 ベルラップ 2500 京都2歳
4 タガノエスプレッソ 2200 デイリー杯
4 コメート 2200 ホープフル2着
6 クラリティスカイ 2000 いちょう
7 サトノクラウン 2000 東スポ
8 ミュゼスルタン 1900 新潟2歳
8 ブライトエンブレム 1900 札幌2歳
10 ダノンメジャー 1850 野路菊、京都2歳2着
11 コスモナインボール 1700 アイビー
12 アヴニールマルシェ 1650 新潟2歳2着、東スポ杯2着
13 エイシンライダー 1200
13 ジャストドゥイング 1200 芙蓉
13 ヴィオ 1200 ききょう
13 マイネルサクセサー 1200 クローバー賞
13 ケツァルテナンゴ 1200 中京2歳
18 アッシュゴールド 1100 デイリー杯2着
19 ネオルミエール 1050 いちょう2着
20 マイネルシュバリエ 1000 札幌2歳2着

(※ダービーに出てきそうなレース選びをしている馬を抜粋*2

今季のクラシック路線は、オープン以上で2回賞金を積んでる馬がアヴニールマルシェとダノンメジャーの2頭しか出ていないため、賞金増額に加えて獲得賞金がバラけて更にハイレベルとなっている。10位のダノンメジャーですら1850万というのは相当激戦。ここから更に京成杯きさらぎ賞共同通信杯〜と3歳重賞が次々と行われ、その1着馬は1勝分を合わせて最低でも2250万の収得賞金に到達する。ダービーの優先出走枠は皐月賞4着以内、青葉賞2着以内、プリンシパル1着の合計7つで、フルゲート18頭から引くと賞金順での出走枠は11。もちろんトライアル次第ではあるが、現時点で11位のコスモナインボールの1700万より収得賞金額が下の馬は「除外対象」と考えておいたほうがよさそうだ。更に、1900万のミュゼスルタンブライトエンブレムの2歳夏までの重賞ウイナー組も出走はかなり怪しく、ブライトエンブレムはそれを察知してか次走を共同通信杯に選定して「トライアル一発勝負」を避けにきている。クラリティスカイサトノクラウンなど秋の重賞ウイナー組も、安泰とは言えない状況なのではないか。

2歳重賞を強化した年からいきなりこんな「戦国」となってしまうと、今後の「ダービーに確実に出走するライン」探りはかなり難しくなることが予想される。少なくともこれまで「出走できるかも」ラインであった1勝+重賞で2着1回という賞金では皐月賞すら出走が難しい時代になるだろうし、ダービーは重賞1勝では出走安全圏に届かない争いが毎年のように起こると思われる。

激戦必至の重賞増加初年度で西高東低の時代に関西のクラシックにつながる重賞ならば毎回重厚なメンバーが揃うものと思っていたのだけれど、どうにも関西の重賞は今シーズンは「手薄」になる傾向があるようだ。今週末のシンザン記念は12頭で前走掲示板がたったの4頭、オープン馬も3頭、2歳重賞で跳ね返されてきたナヴィオンが1番人気になりそうなメンバー。デイリー杯は9頭立て、京都2歳に至っては8頭立ての競走となった。デイリー杯・京都2歳組の上位組はその後の朝日杯・ホープフルでもイマイチ*3きさらぎ賞アッシュゴールドレガッタルージュバックポルトドートウィユよりも共同通信杯アヴニールマルシェブライトエンブレムリアルスティール、ティルナノーグのほうが明らかにメンバー揃ってるように見えるし。シャイニングレイも関西の重賞全部すっ飛ばしてホープフルの次に共同通信杯弥生賞を検討していたようだし*4、朝日杯はG1だからメンバーが揃うとして、他の重賞が軒並み空き巣なのはこれは重賞増やしすぎてメンバーが分散してしまったのか……? いずれにせよ、これからは更に「重賞が空き巣なら、そこを狙って賞金積む、適性・臨戦過程よりメンバー構成」といった戦略は陣営により一層求められてくるだろうし、新しい番組にいち早くアジャストするセンスや情報収集力など、調教師に求められるモノはこれまで以上に複雑なものとなってくるのではないだろうか。

ダービーは、まずは枠に入りこまなければ絶対に勝てない。

関連雑感

重賞競走以外の収得賞金が2014年の夏のクラス編成以降で固定額になったの知らなかった。

JRA競馬用語辞典 - 収得賞金

2歳戦の重賞でないオープン競走は一律で800万になったので、未勝利戦(400万)+500万条件戦(500万)に加えて1着賞金1500万のアイビーSを勝ったコスモナインボールの収得賞金が、最後のアイビーSが2013年までの計算だと+750万のところが+800万になって1700万になっている。これにより、我が出資馬アヴニールマルシェの1650万よりコスモナインボールの1700万のほうが多いことに。ゲフッ

*1:2013年の1着2着ハープスターイスラボニータの活躍はご存知の通り

*2:アルマワイオリはNZTからNHKマイルとの報があったため除外

*3:アルマワイオリが朝日杯2着だけれど

*4:弥生賞らしい