2016年 第83回東京優駿(日本ダービー) レース回顧

第83回 日本ダービー 結果 - JRAオフィシャル
「レベルの高い世代」と言われているだけあって、上位は本当に強かった。レース展開、位置取り、仕掛けどころ、1つのピースが噛み合うかどうかでいくらでも違う結果になりそうな今日のダービーは、本当に終わってほしくなかった。来週も、また次の週も「今年のダービーは何が勝つか?」という話をしていたかった。それほど魅力的なメンバーが揃った競馬の祭典については、ちゃんと自分の言葉でレース回顧を残しておこうと思って珍しくキーボードを執ってみている。

有力各馬の調教や当日の気配についてを中心に書いていこうと思う。

勝ち馬のマカヒキは本当に素晴らしかった。最終追いきりは坂路コースで、まったくブレずに真一文字に足並みも綺麗に駆け上がる様は圧巻の一言。当日も馬体の見栄え自体はリオンディーズにやや見劣りするものの、後肢のパワーが変な方向に分散することなくしっかり前に伝わるパドックの気配。500kg前後のディープインパクト牡馬のほぼ理想形とも言えるバランスの良い体型に、仕上がりきった質の良い筋肉、そしてパドックから馬場入場まで堂々と落ち着ききった立ち居振る舞いは、チャレンジャーでありながら王者の風格を感じさせるものがあった。あとは、本当に川田騎手がどう乗るかであったが、残り200、その不安は杞憂であった。
2着のサトノダイヤモンド。最終追いきりは栗東のCWコースで、僚馬を置き去りにする好反応。皐月賞の時点では少し仕上がりが足りない気がしたものの、ここに来てピッチを上げて仕上ようという意図だったのだろうか。当日は想像通りの惚れ惚れする好馬体で出てきたものの、少し仕上がりが足りない気がした。マカヒキとは違って、サトノダイヤモンドの方が少し柔らかいというか、悪く言うとフニャっとした印象を受けた。きさらぎ賞当時の「まだきさらぎ賞で馬体はこれから仕上がっていく」という印象から、あまり変わってきていない印象で、キャリアを積むごとに「ダービー馬」へと近づいていったマカヒキには相対的に遅れを取っているように思えた。結果的に、サトノダイヤモンドはトップスピードの維持能力で最後また盛り返していったが、一瞬内を開けた隙にマカヒキ抜け出され機動性とトップスピードの差で写真判定スリット1枚分届かなかった。
3着のディーマジェスティ。当日の馬体重は同じディープインパクト産駒のマカヒキ502kg、サトノダイヤモンド500kgより少し軽い472kgで、前の2頭と比べても確かに多少コンパクトで引き締まった馬体。この辺りが皐月賞ではサトノ・マカヒキよりも功を奏したのか、ステイゴールド産駒的ないわゆる「回り脚の速さ」で出し抜けた印象を持った。馬券はディーマジェスティを避けるように買って馬連安目引いて盛大なトリガミになるほどパドックでの評価は「普通」だったし、追い切りもこのレベルにしては平凡だったと思う。それでも最後に前2頭を脅かすかのような末脚で突っ込んできたのだから500kgのディープ牡馬教だけが正義というわけではないということだし、純粋なトップスピードだけならこれくらいの馬体重のほうが乗りやすいのかもしれない。
5着のリオンディーズ。4着エアスピネルは都合により後回し。「サラブレッドとは走る芸術品である」という言葉が最も似合う馬。漆黒の馬体が好天で輝き、筋肉量、体型の美しさ、見栄えだけなら完全に他を圧倒していた。顔まで含めたトータルでは「馬体詐欺師」ことエイシンフラッシュには叶わないものの、その完成されたパーフェクトな仕上がりは「ザ・角居勝彦厩舎の馬」という感じの伝統工芸品のようなビジュアルであった。が、競うのはあくまでレース、競走。見栄えがそのままイコール競走能力ではないというのを、この馬は物語る。上がり最速で突っ込んできてはいるものの、ミルコ・デムーロの導きも噛み合わずに引っかかり通し、ダービーでついにエアスピネルに先着を許してしまう。
4着のエアスピネルは、リオンディーズの均整の取れた美術品のような馬体とは違い、少しゴテっとした筋肉をまとっての当日の気配だったものの、リオンディーズとの比較でムキッとして見えるものの、フラッとに見れば良く仕上がった好馬体であることには間違いはない。「生まれた年が悪かった」とはレース後の武豊騎手のコメントだが、どの年に生まれても何かにやられてそうな気はする決め手のなさは、好馬体ながらも爆発力を感じさせない印象由来なのだろうか。朝日杯での2着、弥生賞での3着とリオンディーズにやられ続け、皐月賞でも進路妨害を受け先着を許す(着順はエアスピネルに軍配)。ついにはダービーでも隣り合わせの着順となってしまい、この2頭は不思議な縁でもあるのだろうか。
6着のスマートオーディン。当日の馬体重は480kgながらも、お父さんのダノンシャンティを髣髴とさせるケンカしたら一番強そうな「ザ・松田国英厩舎の馬」的な馬体。毎日杯京都新聞杯と他の馬よりも詰めて使って来ている分もあってか、カリカリにチューンナップされている印象。だが、リオンディーズの項でも触れたが「競うのはあくまでレース」であり、ダービーはケンカの強い馬ナンバーワン決定戦ではない。最後外からよく伸びては来ていたものの、末脚は届かず6着までであった。キズナと同じ臨戦過程ではあったものの、キズナ毎日杯京都新聞杯は「ダービー馬だ!」という印象のパフォーマンスであり、正直スマートオーディンの場合は偉大なるダービー馬様と比べるとやはりどうしても見劣りする毎日杯京都新聞杯のそれではあった。その分届かず。

今年のダービーは終わってしまったけれど、また来年のダービーに向けて次の土日から2歳の新馬戦が始まる。来年のダービーでは、またどんな名勝負・ドラマが見られるのか。

さて、また来年のダービーが終わるまで、楽しみで死ねなくなってしまった。